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『第21回河上鈴子スペイン舞踊賞』受賞によせて

2024/05/14

先日、一般社団法人現代舞踊協会から、
「第21回(令和4-5年対象)河上鈴子スペイン舞踊賞」受賞者に選ばれたというお知らせを受け取りました。
受賞作品は、大沼由紀舞踊公演「音の旅人2」(2022年/座・高円寺2)です。

時間が経っていたこともあり、
何が起きたのか、理解するのに時間がかかりました。
心底、驚きました。

そして、授賞理由を読んで、
私のこれまでの道のりをしっかり見てくださったことに、
胸が熱くなり、
思わず涙がこぼれました。

【授賞理由】

フラメンコの原点へと奥深く探る内なる衝動を、自らの歌と踊りにより力強く表現し、
「地の底から湧き上がり空高く舞い上がるフラメンコ」の旅を独自の世界に展開した。
その手法は、音楽、演劇、文学、舞踏をフラメンコと関連させ、自分の中へと自在に取り込み、
永い年月をかけて融合させたフラメンコの論理を舞踊言語へと置き換えていくという独自のもので、
常に高い視点で舞台芸術創造を目指している活動を評価して。

フラメンコが知りたくて、
フラメンコに少しでも近付きたくて、
随分と長いこと、フラメンコと出会う前の自分に蓋をしていました。
音楽を勉強し、
テント芝居、舞踏の世界も垣間見て、
たくさんの素晴らしいアートに触れましたが、
フラメンコはアンダルシアの文化ですから、
そういったものを片手にフラメンコを理解しようとしても、
何か違ってしまうんじゃないか。
まずはそこにある味を、赤ん坊のようなまっさらな状態で味わうことじゃないかと、
感じていたからです。

ただただフラメンコを追いかけてきましたが、
何年か前から、
蓋をしたはずの諸々のものたちが、私の中でムクムクと頭をもたげてきました。
それはとても不思議な感覚でした。

でも、フラメンコって物真似でも、学習でもなく、
生き様であるとしたら、
当然のことと言えるかも知れません。

ひたすらフラメンコを追いかけ、
足蹴にされ(部外者ですから、そんなふうに感じることも多々あります笑)、
それでもめげずに(いや、何度もめげてますが、フラメンコの魅力にまた取り憑かれるのです)
追いかけて追いかけて、
そんな道のりの中で、
いつの間にか自分が立ってきたのでしょうか。

コロナ禍でスタジオに籠りっきりの時間に、
自分の中に溜まったものが自然に湧き出て来て、
「音の旅人」が少しずつ形になっていきました。

果たしてそれは、
自分を超えて他者に届けたときに、
伝わるのか、
伝える価値があるものなのか。
歌、踊り、語りはすべて、私にとって「踊り」なのだけれど、
お客様にはどう映るだろう。

そういった不安もありましたが、
今回の受賞は、
迷わず信じる道を行け、と後押ししていただいたように感じています。

私を理解し、共感し、力を貸してくれた演出の佐藤浩希さん、
ついて来てくれた共演者の皆さま、
スタッフの皆さま、
そして何より、劇場に足を運んでくださった皆さま、
本当にありがとうございました。
心より御礼申し上げます。

これからもどうぞよろしくお願い致します。

「音の旅人2」

踊り・歌・語り大沼由紀 ギター西井つよし カンテ小松美保 チェロ下島万乃 パルマ末木三四郎 小谷野宏司

振付・構成大沼由紀 演出佐藤浩希 舞台監督金子芳浩(ニケステージワーク) 音響新田寛(株)パシフィックアートセンター 照明北内隆志(株)パシフィックアートセンター 写真川島浩之 ビデオ撮影竹下智也(竹下智也写真スタジオ) 衣装デザイン大沼由紀 衣装制作小高光江 絵画北村和士 宣伝美術秋山薫子 制作岸典子 主催ブレーニャ

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