SOLO FLAMENCO con LOS VILLARES
2026/10/23

去る8月27日、タブラオ・エスペランサにて、
カディスの歌い手 Juan Villar Hijo と、Juan の息子である Juan José Villar を迎えてのライブが開催された。
Juan José とは15年ぶりくらいの再会だろうか。
Juan Villar とはそれより少し前に出会っている。
同じカディスのギタリスト Manuel Monje “el Pelu” と Juan José を伴っての来日の際に、
うちのスタジオでカンテライブを催したことを、今でも鮮やかに思い出す。
お客様にもアルティスタ達にもいい環境をと張り切り、
まずは椅子を買い揃えねばと、折り畳み椅子を何種類か取り寄せた。
私のこだわりは、木製であることと、背もたれがあること。
ああでもないこうでもないと言いながら、何人かで座り心地を確かめ、
座面までの高さが違う3種類を50脚ほど購入。
スタジオの2面に渡る鏡には暗幕のカーテンを吊るし、
なかなかの会場が出来上がった。
満員のお客様の中、ファンの熱いカンテが炸裂した。
マイクのない環境で、間近で聴くカンテは格別だ。
カホンで参加のファン・ホセが、最後にブレリアを一振り披露して、
初々しい踊りに会場が沸いた。
その彼は、今やスペインのタブラオ等で活躍するバイラオールである。




以前のスタジオカンテライブの様子
そこからの長い年月の間に、忘れられない共演が幾度もあったが、
今回はとりわけ深く深く心に刻まれた時間となった。
感謝しかない。
オープニングは、三枝雄輔さん、鈴木時丹さん、Juan José によるブレリア。
西井つよしさんのギターソロ(パルマ:三枝さんとJuan José )の後は、
鈴木時丹さんのシギリージャ、
Juan José のソレアで1部終了。
2部はエンリケ坂井氏のギターソロで幕開け。
クラシックからフラメンコへ展開させるオリジナル曲。
会場に流れる空気が、ギターの音によってどんどん変わっていく。
そしていよいよJuan Villar のカンテソロ。伴奏はもちろんエンリケ師匠。
曲は、全員が待ち望むカディスのアレグリアス!!!
サリーダですでにカディスの匂いが立ち上がり、ギターがその波を絶妙にいざなっていく。
カンテとギター。
たった2人が織りなすフラメンコは、オーケストラにも勝る。
これぞ至芸。
ここまでフラメンコを充満させられたら、私はその中に入っていくだけ。
ソレアを踊る。
リハーサルは無し。レトラ二つ、エスコビージャ、ブレリアと事前に伝えるのみ。
あとは集中。どこにも漏れがない集中のみ。この声にどうやって入っていくか。
集中がお互いの呼吸を読み、全員が一つになっていくのが分かる。
何か起きるか、次の風景が見えるようになる。
この中に入ることが出来たら、無理は何もない。
無理やり何かするのではなく、必然が連鎖する。
こうして書くのは容易いが、実は滅多に起きることではない。
どこかに無理が生じたり、張り切り過ぎたり(苦笑)、噛み合わなかったり、、、
しかしこの日は、何もかにも自然に時が流れていった。
自然というと、どこか緩い感じがするかも知れないが、
それとは真逆。
まるで闘牛場にいるかの如くの、静かで恐ろしく、隙のない時間がもたらす必然。
もう少し踊っていけるか。
そんな勇気をくれたヒターノ、Juan Villar Hijo。
フラメンコ史上に残る偉大な歌い手 Juan Villar を父に持つ。
血が受け継がれ、フラメンコが受け継がれていく。
部外者の私は、ヒターノの血に圧倒されながら、そこに自分の活路を見出そうともがき苦しみ、
そして時に、フラメンコが差し出した手を離すものかと握り締める。
しかしまた、その手はすぐに離れていく。
掴んだと思ってはまたすぐ見失う。
フラメンコとは恐ろしい魔物である。
そんなフラメンコに出会えた一夜であった。
